東京都は、2016年“自治検”をはじめます! ~ 一人ひとりが法務を意識する職場づくり ~
2016.8.8
行政運営をめぐる状況が大きく変化してる昨今、自治体職員は、ルールや前例のない 課題に対してもスピーディかつアグレッシブな政策展開が求められています。また、 全体の奉仕者として、地に足の着いた着実な職務遂行を通じて都民の信頼に応えてい く必要もあります。そこで、職員の文書・政策法務能力向上を目的に、東京都の取組 や、具体的方針についてお話を伺いました。また、自治体職員の職務遂行能力の向上 に向けた取り組みとして、2016年から始める自治体法務検定に対する期待についても お話していただきました。
- Q 東京都の「文書・政策法務の能力向上・人材育成方針」について教えてください。
- 東京都は、全ての職員に対して、業務の基礎となる文書の能力や行政活動の根本となる法令を使いこなすとともに、能力向上・人材育成の取組を体系的に明らかにするため、平成20年度に「文書・政策法務の能力向上・人材育成方針」を策定しました。
しかし、文書・政策法務の足元は依然として不安定な状況であり、能力向上・人材育成は道半ばです。
また、東京都は平成26年12月に、史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現や人口減少社会への対策を盛り込んだ「東京都長期ビジョン」を策定し、「世界一の都市・東京」の実現を目指していますが、その一方で、地方分権一括法に伴う条例制定権の拡大や行政不服審査法関連3法の改正等、行政運営をめぐる状況も大きく変化しています。
このような中、職員の執行力をより一層高めるために、「執行体制の機能強化」「人事施策の実効性向上」及び「職員意識の変革促進」を目標として「都庁 組織・人事改革ポリシー」が平成27年3月に策定されましたが、これに掲げる理念の実現を図り、職員の職務遂行力の基礎である文書・政策法務の能力向上を図るため、同年7月に「文書・政策法務の能力向上・人材育成方針」の改定を行ったものです。
- Q 「文書・政策法務の能力向上・人材育成方針」改定のポイントについて教えてください。
-
◆能力向上・人材育成の方向性
管理職・課長代理を中心に、各職員が文書・政策法務の重要性をより一層強く意識した職務遂行を行っていくための取組を推進
各職層の育成目標を改めて示し、その目標に応じた育成策を推進(特に実務の要である課長代理の育成を重点的に行う。)
職場における日々の実践を支援するための支援策を充実◆各職層等の育成目標
職層など:標準的な目標
新規採用職員:起案や公文の作成などができる。法的根拠を調べながら業務を遂行できる。
主事・主任:担当事業の法規を理解している。後輩職員に対する指導・助言ができる。
課長代理:担当事業の政策課題に関する法的検討ができる。OJTの中核的な役割を担える。
管理職:文書・政策法務の重要性を認識させる環境づくりができる。法的リスクを管理できる。
文書・政策法務主管ライン:起案文書の審査ができる。法規の解釈や事業の法適合性をチェックできる。◆能力向上・人材育成のための具体的方策
(1)課長代理級職員への意識づけ
課長代理研修において文書・政策法務に対する意識付けを実施
(2)職員の底上げを図るための取組
自治体法務検定等の受検奨励、eラーニングの実施
(3)文書・政策法務の重要性を認識させ、日々の実践を支援する取組
管理職に対する意識付けの徹底
文書・政策法務事務強化月間の設定
都庁文書だよりの発行(年4回)
ポータルサイト「文書・政策法務の広場」の充実
(4)文書・政策法務の専門性を高める取組
文書取扱主任向け研修の強化、ハイレベル事例演習研修の実施
- Q 具体的な取組について教えてください。
- まず、職員の意識改革を進めていきます。「文書・政策法務事務強化月間」の実施や「都庁文書だより」の発行などを通じて、職員が文書事務を学ぶきっかけづくりや、意欲の喚起を図っていきたいと思っています。
また、研修の充実を進めていきます。いずれも希望制で、「主事級職員向け」政策法務研修(基礎編)、「主任・課長代理級職員向け」政策法務研修、「文書・政策法務事務の担当職員等向け」ハイレベル事例演習研修と職層や業務内容に応じた育成目標を明確にして研修内容の充実・強化を図っていきます。
7月には、これから政策法務の中核を目指す若手職員を対象に政策法務フレームワーク研修も実施します。政策法務の基本を身に付けるための研修として位置づけ、自治体法務検定のテキストと問題集を使用して研修を実施します。研修受講者の中から、1名でも多くの職員に受検してもらいたいと考えています。
今までの政策法務研修を見ていると、若手職員が積極的に取り組んでいる姿をよく見ます。意欲的な姿勢を今後も発揮してもらいたいと思います。
最後に、OJTや自己学習を進めるための取組を進めていきます。文書課ポータルサイト「文書・政策法務の広場」にある資料の充実等を通じ、各職場でOJTなどを進めていくための環境づくりを行うほか、自治体法務検定等の法的資格取得を奨励することで職員の自己学習を促していきます。
- Q 自治体法務検定を一つのツールとして採用したきっかけを教えてください。
- 自治体法務検定のコンセプトがそうだと思うのですが、自治体に特化した法務検定なので、自治体職員が最低限必要となる法的知識を問う検定として評価しています。
業務を遂行する中で、法的知識は必ず必要となります。法的知識が必要なことは分かっていながらも、多忙な業務の中で、意欲的に学ぶ機会をなかなか創出できませんでした。
しかし、自治体法務検定はただテキストを読んで学ぶだけでなく、点数という目に見える結果がわかるので、学ぶきっかけとしては最適だと思い、採用に至りました。
研修では分かりにくい、分野ごとの強み弱みや、総合的に、法知識がどの程度あるのかということが分かり、モチベーションが上がるのではないかと考えています。
- Q 職員にどのようなことを期待していますか?
- 文書事務は、行政活動の基本ですので、事務系職員だけでなく、技術系職員も含めた全ての職員が、文書・政策法務の能力を向上させることが必要です。
文書・政策法務を軽視すると、都政に重大な支障をきたすおそれがあります。その一方で、適切に使いこなせば、行政課題を着実に解決することにもつながります。
文書・政策法務の能力は、一朝一夕に向上するわけではありません。日々の実践を重ねることで少しずつ能力が高まっていきます。職員の皆様には、日々、文書事務を適切に行っていくことを意識していただきたいと思っています。
自治体法務検定は、政策法務の重要性に気付くことのできる良いきっかけになると思います。ただし、検定試験というのは、高得点を取ることが目的となってしまいがちです。目的と手段を取り違えることなく、自治体法務検定を使って法的知識の重要性について改めて「気づき」を感じてもらえればと思います。