結果分析データ

平成30年度全体講評(政策法務)

 今回、台風による中止の影響で受検者が多くはなかったものの、受検者の約84%がクラス認定を受けるという良好な結果であり、平均点も600点を上回るという優秀なものであった。設問は、『公式テキスト』中の基本的なものから、『公式テキスト』以外から知識を得なければならない高度なものまで用意してあるが、立法法務を中心に、高度なものでも正答率が50%を超えており、受検者の優秀さがうかがえる。
 以下では、今回の結果の傾向を取りあげた上で、検定委員会が期待する、今後の学習姿勢について、コメントをする。

 今回の配点に対する平均点の割合を分野別に見ると、『公式テキスト〔政策法務編〕』第2章(立法法務)や第3章(解釈運用法務)などでは6割以上と高い正答率を誇っているものの、第5章(自治制度の改革)、第6章(市民参加と市民協働)及び第7章(情報公開と個人情報保護)の正答率がやや低くなっている。
 正答率について当委員会が想定していたものよりも大幅に低かったものとしては、事務の区分と国・地方の役割分担に関するもの、第2次地方分権改革の内容に関するもの、非金銭上の義務履行に関するものなどがある。また、情報公開や公共政策に関するもので多少難しい内容としたものについては、想定はしていたが、正答率がかなり低かった。 総じて、行政実務で直接扱わないテーマについてはなかなか正答が得られていないようであるが、政策法務はときにダイナミックな制度改革を志向することがあるので、なるべく幅広い視点からそれぞれの業務の意義や課題を見出すようにしてもらいたい。
とはいえ、政策法務論のベースとなる立法法務や解釈運用法務の基本的事項については正答率も高く、近年、自治体職員の方が力をつけてきたことがうかがわれ、大変頼もしい結果である。

 検定委員会は、問題の検討と受検者の声などを踏まえて、常に『公式テキスト』の見直しを進めている。各年版は、極端な増量を避けるという観点から基本的な構成・内容は改めていないものの、政策法務の知見として受検者に体得してほしい事項については、毎年、記述を補正・追加している。また、政策法務論の発展を踏まえて、重要なテーマについては、検定委員会メンバー等が関連の著作や小論などを公にしている。
 まずは、2~3年に一度は『公式テキスト』の最新版と旧来の版とを比べ、どこを改めているのかという点に注目していただきたい(古本等を活用することも一案である)。さらに、近年の『公式テキスト〔政策法務編〕』は、『公式テキスト〔基本法務編〕』との役割分担と連携を重視しており、基本法務の知見を政策法務で応用するといった趣旨での問題作成も進めている。『公式テキスト〔政策法務編〕』と『公式テキスト〔基本法務編〕』を縦横に活用していただきたい。また、政策法務では、公共政策論の知見が大切になるので、『公式テキスト〔政策法務編〕』の第8章を味読した上で、関連文献にあたるとよかろう。
 さらに、『公式テキスト〔政策法務編〕』の側注や、本文を掘り下げた内容について、巻末参考文献が扱っていることがある。検定委員会が吟味・厳選して載せているものなので、とくに最近の文献を眺め、政策法務(論)のトレンドを把握していただきたい。
 個人で取り組むことに不安や限界を感じたときは、身近な人とグループを編成しながら、分担して報告し合う形で自己の知見を豊富にしていくという手法を試みてほしい。
 自治体法務の能力向上は、関係者の自学・自修が基本である。受検者の各位が、今回の検定での好成績を持続させつつ、より一層の高得点を目指されることを願っている。

平成30年12月
自治体法務検定委員会