結果分析データ

2024年度第2回全体講評(基本法務)

 今回の検定は、オンライン受検に一本化した自治体法務検定を年2回実施する方式になってから2年度目の第2回の検定である。受検者数は88名(市区町村職員46名、都道府県職員28名、その他14名)である。昨年度同時期の第2回の受検者は87名であったので、ほぼ横ばいであり、本年9月に実施された今年度第1回検定の受検者は82名であったので、そこからは微増した。しかし、会場受検方式の時期においては、コロナ禍であっても250名以上の受検者があったので、これに比べると一般受検者数は、やはり低調に留まっている。場所を選ばずどこからでも受検できるオンライン受検の方式が定着し、より多くの方々が本検定にチャレンジすることを期待したい。

 今回の検定結果の全体的な傾向を以下に紹介しつつ、若干の講評を加えることとする。

 総受検者の平均点は1000点満点中495点であり、500点の大台を割ってしまった。これは、2015年度の第5回検定(484点)、2018年度の第8回検定(492点)、2019年度の第9回検定(455点)以来の4回目の芳しくない結果である。比較的好成績であった昨年度同時期の2回目の検定の平均点565点と比べると70点も低い。500点未満のクラス認定がされなかった受検者も50名(受検者総数の56.8%)おり、平均の成績が低調となっている。ただ、プラチナクラス(総点900点以上)を獲得した受検者はいないものの、ゴールドクラス(総点700点以上)の達成者は10名(総受検者の11.4%)おり、この結果は、過去の成績に比して際だって劣っているわけではない。

 なお、市区町村職員と都道府県職員の間では、それぞれの平均点に明確な差があることが例年の傾向であったが、今回は、両者の平均点はほとんど同じである(むしろ、市区町村職員の方が1点高い)という結果となった。市区町村職員の奮起の表れと受け止めたい。

 各設問の正答率を分野別で見ると、「序章」(73.9%)が抜きん出て高く、続いて「民法」(55.3%)、「刑法」(54.4%)、「地方自治法」(51.1%)、「憲法」(50.8%)、「行政法」(46.6%)の順番である。「序章」の分野からの出題は2問だけなので、能登半島地震でも注目を浴びた耐震改修促進法の制定時期を問う設問57の好結果が大きく影響したものである。「民法」、「刑法」、「地方自治法」の分野の成績は、例年とほとんど変わらない結果であったが、例年比較的良好な結果の「憲法」分野の結果がふるわず、例年芳しくないことが多い「行政法」分野の結果がさらに良くなかったことが、全体の成績を押し下げたようである。

「憲法」分野では、基本的人権の私人間効力について間接適用説を採用していると解されている判例の理解を問う設問1や憲法改正手続の知識を問う設問7などのごく基本的な設問の誤答が目立った。また、「行政法」の分野では、行政の実効性確保手段と条例制定権の関係を問う設問49や行政不服審査法の趣旨・目的や基本的内容を問う設問62のような、基礎的で容易な設問の取りこぼしが散見された。

 総じて、今回の検定においては、自治体法務の中心というべきいわゆる公法分野(憲法、行政法、地方自治法)の成績がふるわなかったといえる。前回9月の検定の結果の講評において、職務に直接関係する公法分野(憲法、行政法、地方自治法)のみならず民法・刑法のようにやや縁遠い分野も基本的な法分野であり、法的思考のトレーニングにとって極めて重要である旨を強調したが、今回は、上記の自治体法務検定の中心分野も、おろそかにせず学修を積み上げて、捲土重来を期すことを望みたい。

2025年3月
自治体法務検定委員会