結果分析データ

2019年度全体講評(政策法務)

 今回、台風による中止の影響で受検者が少なかった前年より受検者が増加した。そうした中で、受検者の約85%がクラス認定を受けるという良好な結果であり、平均点も600点を上回りしかも前年の平均点を超えるという優秀なものであった。設問は、『公式テキスト』中の基本的なものから、『公式テキスト』以外から知識を得なければならない高度なものまで用意してあるが、高度な設問でも高い正答率のものがあり、受検者の優秀さがうかがえる。
 以下では、今回の結果の傾向を取りあげた上で、検定委員会が期待する、今後の学習姿勢について、コメントをする。

 今回の配点に対する平均点の割合を分野別に見ると、『公式テキスト〔政策法務編〕』の全分野で6割以上の正答率となっており、例年と比べても受検者が万遍なく準備を進めてきたことがうかがえる。
 ただ、行政不服審査法や行政事件訴訟法、地方自治法における事務や関与の制度、義務付け・枠付け改革に伴う条例整備のあり方など、自治体行政運営の基本的制度を尋ねる問題の正答率が高くなかった。日々の業務に直接関連しない事項については、なかなか手が回らないということであろう。ただ、行政手続法の基礎的知識があれば難しいとはいえない規制手法(届出・行政指導)の法的意義・性質についての問いに大半の受検者が間違っているといったこともあり、自治体が規制的条例の制度設計をするときに不安を残す解答結果となっている。
 今年度の結果を見ると、『公式テキスト〔基本法務編〕』で制度的な事項をしっかり理解した上で、『公式テキスト〔政策法務編〕』の関係個所へ読み進めていくようにすれば、法務能力向上に効果的なのではないかと思われた。 もとより、設問の全分野において、総じて正答率が高くなってきており、自治体職員の法務能力の底上げが感じられるところである。

 検定委員会は、問題の検討と受検者の声などを踏まえて、常に『公式テキスト』の見直しを進めている。各年版は、極端な増量を避けるという観点から基本的な構成・内容は改めていないものの、政策法務の知見として受検者に体得してほしい事項については、毎年、記述を補正・追加している。また、政策法務論の発展を踏まえて、重要なテーマについては、検定委員会メンバー等が関連の著作や小論などを公にしている。  まずは、2~3年に一度は『公式テキスト』の最新版と旧来の版とを比べ、どこを改めているのかという点に注目していただきたい(古本等を活用することも一案である)。さらに、近年の『公式テキスト〔政策法務編〕』は、『公式テキスト〔基本法務編〕』との役割分担と連携を重視しており、基本法務の知見を政策法務で応用するといった趣旨での問題作成も進めている。『公式テキスト〔政策法務編〕』と『公式テキスト〔基本法務編〕』を縦横に活用していただきたい。また、政策法務では、公共政策論の知見が大切になるので、『公式テキスト〔政策法務編〕』の第8章を味読した上で、関連文献にあたるとよかろう。
 さらに、『公式テキスト〔政策法務編〕』の側注や、本文を掘り下げた内容について、巻末参考文献が扱っていることがある。検定委員会が吟味・厳選して載せているものなので、とくに最近の文献を眺め、政策法務(論)のトレンドを把握していただきたい。  なお、令和2年4月には、地方自治法及び民法(債権法)の改正法が施行され、自治体法務の実務にも、大きな影響を及ぼすものと思われる。ぜひ、次の『公式テキスト』も手にされていただきたい。
 なお、個人で取り組むことに不安や限界を感じたときは、身近な人とグループを編成しながら、分担して報告し合う形で自己の知見を豊富にしていくという手法を試みてほしい。
 自治体法務の能力向上は、関係者の自学・自修が基本である。受検者の各位が、今回の検定での好成績を持続させつつ、より一層の高得点を目指されることを願っている。

2019年12月
自治体法務検定委員会