全国リレーシンポジウム 名古屋会場レポート
自治体法務検定・全国リレーシンポジウムの第5弾は、平成24年5月14日に名古屋国際センターで開催されました。
中京都構想を掲げ、愛知を日本の中心にと訴えて知事に就任した大村秀章知事と、2005年の政令指定都市移行を契機に、大きく生まれ変わった静岡市を対話市政によって導く田辺信宏市長の2人を迎えた会場には、遠くは東北からの参加者も含め、250人を超える多くの自治体職員・議員等が集まりました。
■地域主権改革の意義
第1部の基調講演では、北川正恭氏(早稲田大学教授、元三重県知事)が、「地域主権改革と自治体の役割」と題する基調講演を行いました。
域主権改革により自治体や住民はどう変わったのか、地域主権改革一括法により自治体の条例・規則制定行為はどう変わり、自治体の自己責任はいかになったか等々、時には“歯に衣着せぬ”明快な表現を用いながら、随所に本質を突いた厳しい内容でしたが、同時に、行間に感じられる自治体職員に対する氏独特のまなざしには、長年自治体現場の第一線で、しかも自治体最高経営責任者として辣らつ腕わんを振るった氏の経験や思いが強く感じられる講演となりました。
特に、これからの自治体は、税金を無駄遣いする“tax eater”としての自治体ではなく、“tax payer(納税者)”のために奉仕する自治体であるべきで、また同時に、自治体が道を誤れば(誤った条例を制定すれば)自治体が訴えられる時代であるのだから、自治体職員個々の法務能力を高めることは非常に大切なことであり、「自治体法務検定」の意義もここにあるのではないかと締めくくりました。「自治体法務検定」を庁内キャリアシステムに取り入れた静岡市の取組は、この北川氏の主張の実践例ともいえるのではないでしょうか。
北川正恭氏
■地域主権改革への取組
第2部のパネルディスカッションでは、大村秀章氏(愛知県知事)と田辺信宏氏(静岡市長)という異色の2人をパネリストに、北川氏をコメンテーターに迎え、東海ラジオのニュース解説者である加藤直人氏(中日新聞社論説委員)が司会をする形で、「地域主権改革と中部圏の地域課題」と題した活発な議論が交わされました。
地域主権改革第1次・第2次一括法に関して、特に市町村の職員の中には、事務や権限の移譲は、結果的には市町村の業務量が増えるだけであるので、今までのように国の大きな傘の下にいた方が安心であると思っている職員が多いのも事実なのではないか、との田辺氏の発言が印象的でした。
大村氏からは、中京都構想についての発言もあり、愛知県が、国の産業政策の担い手として、国際競争力を付けていくためには、国の権限や財源を奪い取っていかなくてはならない、地方交付税制度の見直しもそのひとつであり、何としてでも国と地方の関係を対等なものとしていかなくてはならないと強調しました。