全国リレーシンポジウム 東京会場 「対談」 レポート
「地域主権改革」への関心の高まり
平成24年2月20日(月)、東京新宿区の日本青年館において行われた自治体法務検定リレーシンポジウムには、会場が満席になるほど多くの人が集まりました。
参加者は自治体職員、議会議員、学生のほか、民間企業からも多くの人が参加し、シンポジウムのテーマとして掲げた「地域主権改革」への関心の高まりがうかがえます。
地域主権改革がもたらすもの~その意義と課題
第一部では、総務省地方財政審議会会長の神野直彦氏が講師、朝日新聞社の坪井ゆづる氏が聞き手となり、「地域主権改革がもたらすもの~その意義と課題」と題し、対談が行われました。
今の自治体の役割とは
神野氏は、まず、世界でグローバル化が進み、大量生産・大量消費の画一的な工業社会から多品種少量生産の多様な知識社会へと産業構造が転換されることを指摘しました。
その中にあって地域社会の役割自体が、現金給付からサービス給付へ移行すること、また地方分権の進展により国民生活を身近なところで守っていくという考え方が大事になってくると述べられました。
地方分権が進まない原因は何か
また坪井氏は、2009年に政権交代が行われたとき、民主党は地方分権を「一丁目一番地」として掲げたにもかかわらず、地方分権そのものは前に進んでいないことを述べ、その原因は何かという質問を神野氏に投げかけました。
神野氏は、地方分権が進んでいないことについて、2つの要素が絡み合っていると指摘しました。
1つ目は、1981年に第二次臨時行政調査会において地方分権が果たす役割を国の財政再建の実現、国の地方財政を縮小させるという点に求めたこと。2つ目は、福祉元年と言われた1990年の第3次臨時行政改革推進審議会では、モノによる給付からサービスによる給付に変化しそれを提供する主体は自治体なのだと論じられたこと。「地方分権」とは言いつつも異なる意味合いにおいて、まさに「同床異夢」といっていい事態が地方分権の方向を迷走させているのではないかと話しました。
3.11後の地方分権
坪井氏は、東日本大震災以降、政府の政策に地方分権とは全く別のベクトルが働いていることを指摘。
たとえば、復興交付金は地域のニーズに応じた事業に分配されるのではなく、5省庁40事業に振り分けられメニュー化されて、それを自治体に選択させるような手法になっており、結果的に現場にそぐわないものになっている。民主党がマニフェストに掲げた一括交付金にしても同じことが言え、現場では使いづらいという批判が各地で生じていることを具体例を交えながら論じられました。
それに対し、神野氏は、一括交付金が使いづらいという批判は承知しているが、一括交付金自体は地域主権の大きな一歩であるという認識を示し、今後徐々に修正していく必要があることを述べた上で、これまでの反省を次のように説明しました。
各省庁は機能的・産業別に分断されているが、自治体の任務は、住民の生活保障という観点から総合的に展開されていかなければならない。国の補助金を使いながら行うと、総合行政どころか産業行政になってしまう。この反省は阪神淡路大震災のときから指摘されていたことなので、今回の東日本大震災では同じ轍を踏まないようにしなくてはならないと論じました。